『新装版 昭和柔俠伝』はバロン吉元による日本の漫画作品。「トーチコミックス」(リイド社)から発売。
この漫画には「時代を超えるもの」がある。 三島由紀夫は東大全共闘に向かって、 「君たちが『天皇』と一言いえば、私はいっしょにやっただろう」と宣言した。 その一年後に、バロン吉元は三島とはまったく違う言葉づかいで、まったく違う文脈において、 あらゆる政治的立場を越えて日本人の正義感に触れる物語を語った。 これは「偉業」と呼ぶにふさわしい達成だ。 全巻解説:内田樹 戦火の足音より速く、少年少女の若き鼓動が走り出す 柳勘太郎、十四歳。満州をはなれ祖国・日本へ。 ぎこちなくも瑞々しい交歓の日々は、とある謀略により一変する。 理不尽・不条理の渦巻く開戦前夜。 ファシズムの躍進、国際的孤立、国家権力による弾圧。 失意の果てに、弔いかさねた少年の夢は、まだ青き大空に吸い込まれていくーー。 <収録作品> 「第一章 純情なり」「第二章 多感なり」全16話 <特別収録> 解説「『柔俠伝』にある『時代を超えるもの』」内田樹 年表 『昭和柔俠伝』の時代 バロン吉元(ばろん・よしもと) 1940年11月11日、旧満州・奉天市出身、鹿児島県指宿市育ち。 1959年に漫画家デビュー。劇画隆盛期に『どん亀野郎』『黒い鷲』『殴り屋』ほか多数の作品を発表し、代表作『柔俠伝』はシリーズ4作を約10年間にわたり連載。 ピーク時はひと月に300ページ超を執筆する人気漫画家となるも、1980年に全ての連載を終えて単身渡米、マーベル・コミックなどで作品を発表。 帰国後は漫画執筆と並行して一枚絵に着手し、以後30年にわたりバロン吉元の名を伏せ絵画制作に没頭。 2004年、大阪芸術大学キャラクター造形学科教授に就任し、2013年の退官まで後進育成に力を注ぐ。 2015年には雅号をバロン吉元に統一。 以降、漫画作品を収めた初の画集『バロン吉元 画俠伝 ArtWork Archives』(リイド社)や、絵画を中心とする『バロン吉元画集 男爵』(パイインターナショナル)を刊行。 画業60年を迎えた2019年には日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞。 近年は北米やヨーロッパを中心に過去作の翻訳出版が進み、展示開催や国際漫画祭への参加など国内外で精力的に活動。 2024年には約20年ぶりの新作劇画『あゝ、荒野』(原作:寺山修司)を「コミプレ」(ヒーローズ)で月刊連載開始。