『夕凪の街 桜の国』(ゆうなぎのまち さくらのくに)は、こうの史代による日本の漫画。2003年から2004年に『WEEKLY漫画アクション』『漫画アクション』に掲載、描き下ろしを加えて双葉社アクションコミックスより2004年に刊行された。全1巻(全98頁)。
1955年(昭和30年)、夏。平野皆実(ひらの みなみ)は建設会社の事務所で働いているが、原爆スラムのあばら家で母親のフジミと暮らし、靴が減らないように、通勤の途中から裸足で歩くようにしていた。学費を援助してくれた伯母に返金するため、そして伯母夫婦の養子となり水戸市で暮らす弟・旭(あさひ)に会いに行くため、貯金をしなければならなかったからだ。現在は平穏な日常を暮らしつつも、原爆の話題に触れないようにしている街の人々に不自然を感じ、原爆を落とした側から死んでしまえと望まれながらも生き延びている自身や、死んでも仕方がない人間と思われている、またそう思われても仕方がない人間に自分がなってしまったのだと考え複雑な思いを抱いていた。ある日、皆実は、新大橋のたもとで同僚の打越豊(うちこし ゆたか)から求愛されるが、同じ橋の下を無数の死体が浮かんでいた原爆投下直後の光景が蘇る。そして、あの日、助けを求める負傷者を見捨て、死体を平気で跨いだり下駄を泥棒して歩き、やりきれない思いから、途中で合流した姉と共に川に浮いた死体に向け瓦礫を投げつけた自分が幸せになるわけにはいかないという衝動から、その場を走り去る。